1988 ニューヨーク到着

ケネディー空港にて。

往復の、6ヶ月オープンチケットだけで、事前のホテル予約もしてなければ、スケジュールも決めず、親友の "Chicko" と二人で、 ただふらりと、ここニューヨークへ来てしまった。 勿論二人とも英語はまるでダメ。
ゲートで、"Sight seeing"、(Purpose?  目的は?の質問に対して)
"10 days." (How many days?  何日間?)
"Hilton Hotel" (Where are you going to stay? 宿泊先は?) とだけ「おきまり」の答え。(これだけは前もって練習していたのです。) すんなりと入国OK。全てが上の空、まるで夢のなかの出来事の様に感じていた。

二人とも、海外旅行用にしてはあまりにも小さいバッグをかつぎ、空港ロビーを出る。 いよいよアメリカの大地 をこの足で踏みしめる時が来た。
6月のその日は、快晴で湿度も少なく、肌をなでる風が異国の匂いと共に僕達を快く刺激した。 この時、僕が感じたニューヨークの匂いとは、「洗剤」 の香りそのものだった。実は、これが後になると、とんでもなく変わるのだがそのことは、また別の機会に。 あつ、そうそう、この時、 1ドルは約140円前後だったと思う。

**** I've got my kicks on the ground.
"kick" は「刺激」「興奮させる物」等のスラング。"stimulation"
(僕はその大地の上で快い刺激に包まれた。)ってな感じ。


ある男の接近。

快い興奮に包まれながら、僕達は空港からマンハッタンへ行く地下鉄を探し始めた。しばらくうろうろしていると、ある男が近づいて来た。
"Hi, where are you guys from?"(やあ、どこから来たの?)
僕ら、「ジャパン」
"Oh, you 're Japanese. Do you need help?"(日本人か。何か手伝おうか?)
僕ら、「サブウエィスティション」
っと、まあこんな感じで、その後は何を言ってるのかさっぱりわからず、ただ、男のよく動く口がクローズアップされるだけ。  しかし、そのうちに彼の時々やる視線が、どうも僕らのバッグにいっている事に気付いた。 (ヤバイ、話に聞いていたけど、さっそく現れたか。でも盗られてなるものか)
その間が4、5分だったのか15分以上だったのかは、緊張のあまり今でも良く覚えていないが、何とか彼の話をさえぎってその場を離れた。 男も諦めたのか、ただっ広い駐車場の方を指差して、最後にこう言った。
"Hey, station is over there"(駅は向こうの方だ。)
勿論、地下鉄の駅はそんな方には無く、正反対の方にあった。
僕達がニューヨークで最初に関わったのは、どうやら泥棒だったようだ。

**** Watch out!
Watch back, watch your bag!!
"watch out" は「気をつけろ」で、よく使います。
(後ろに気をつけろ、バッグにも!)
「バック」と「バッグ」にかけてみました。(おそまつ、、)
You got it ?


Pay phone(公衆電話)

JFK(ケネディー空港)から、前もって連絡をとっていた友人(彼女は その時すでにニューヨーカー、3年目)に到着した事 を電話する事にした。
公終電話の前に立ち、メモを取り出す。そこには彼女のナンバー、212-***-****とある。さっそくダイアルしてみる。、、、、、通じない。もう一 度。、、、、、通じない。
番号は確かで、押し間違えもない。ただダイアルキーの数字の下にアルファベットが並んでいる。これは番号の組み合わせが、うまく単語になれば、(1492 を「石国」と覚える 様なもの)ナンバーを言葉で記憶できるというためのもので、この際は関係ない。
二人で原因を考えるが分からない。たかが電話一本するのに、なんてこった、、、。
隣の外人さん(いや、いまは我々が外人か)に聞くことも出来ず、まあいいか、直接彼女のアパートを訪ねるか、と安易に決断をくだしマンハッタンへ向かうこ とにした。

実は、この時の失敗は、こういう訳だったのだ。最初の 212 はエリアコードでこの場合はマンハッタンの コード。JFKはマンハッタンの外、 そこで必要なのがなんとエリアコードの前に「1」を加える事。 たったそれだけの事だったのだ。つまり、1-212-***-****とダイアルすれば問題なかったのである。まぬけな話かもしれないが、何の予備知識も なく訪れた異国で、すったもんだした事も、 それなりに、いや それだからこそ、思い出深くなっているのだ。
確かに僕らは "smart"(スマート、お利口さん)ではなかった。

*** Don't get smart!(えらそうにするな!)
"smart" は「利口」「頭が良い」「賢い」の意味でよくつかわれます。
スマートさをひけらかすと言われるかも。
"You are obnoxious! Get out of my face!"
(お前は不愉快だ。とっとと消えろ。)
喧嘩をする時に、ぜひお使い下さい。ちなみに、今流行りの
「むかつく」なら " disgust "がぴったりです。この言葉も頻繁に耳にします。
"You disgust me ! "(オメエはムカツクんだよ!)

そうそう、発音の事で一言。例えば  "Manhattan" これを「マンハッタン」と発音してもほとんど通じません。
「メナァッタン」でバッチリです。こういうの多いです。
前の " You got it ?"(分かった?)も「ユー ガレッ」でOK.


Washington Jefferson Hotel

地下鉄に乗った。マンハッタンへ向かう車内は、想像していたものと全く違 い、乗客は少ない。
平日の昼とはいっても、東京での事を思うとあまりの違いにとまどう。
人種の多さ、黄色とオレンジ色のプラスティックシート。初めての地下鉄の雰囲気に馴染めないまま、降りる駅を見逃すまいと、停車するたび必死に外のサイン を 確認する。
どのくらい時間がかかったのか覚えていないが、何とか目的地に辿り着く。
地上に出るとそこは、まぎれも無くマンハッタンだった。緊張と興奮と、抽象的な期待感が混じりあった「ハイ」な気分。 Here we are !
道路が広い。歩道が広い。ビルが高い。古くて重みのある建物。世界一の都会なのに、時間はゆっくりと流れている。「大きさ」が第一印象だった。

友人のアパートに向かおうとウロウロしていると、10歳位の少年達が近付 いて来た。
彼女の住所のメモを持ったまま、あたりを捜し始めてからずいぶん経っていたらしい。
彼らにメモを見せてみる。リーダーらしき少年は手際よく電話をし、その後「さあ、ついてきな」と言わんばかりに軽く首を振ってうながす。
あっという間に彼女の所に案内してくれた。相棒の Chickoは、お礼にと20ドル札を1枚あげたのだが、その時の少年の顔が今でも忘れられない。 札を受け取った時の、大きくまん丸く開いた目と口。その後のきめぜりふ。
「この辺りで何か困った事があったら、いつでも俺にいいな。俺の名は**というんだ。」そう言うと仲間を引き連れ、急いで戻っていった。
アパートに入って彼女と再会の喜びを交わしたあとで、この話しをすると驚いて、20ドルがいかに大金で、少年達がどれくらいラッキーだったのかをこんこん と説明された。
勿論、二人とも今では彼女の言った事が本当に良くわかっている。

これからの宿泊さきとなるホテルを捜さなければと、彼女に相談すると、彼 女は安いホテルで、日本人も多く滞在しているという、 "Washington Jefferson"に連れて行ってくれた。
51丁目にあるそのホテルはかなり古く、向かいには、これまた古い教会があった。

*** You can count on me .
(俺をあてにしていいよ)
誰かをあてにして何か頼む時など、" count on " をよくつかいます。
"Can I count on you?"   "Oh,please ,count me out"
 (君をあてにしていいかな?) (おい、頼むよ。俺ははずしてくれ)


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